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この冬一番ヤバい映画『暁に祈れ』松江哲明監督&高橋ヨシキが“地獄ライド映画”の魅力を語り尽くしたトークイベントレポート

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“地獄”と呼ばれた実在のタイの刑務所に服役し、ムエタイでのし上がっていったイギリス人ボクサーの自伝ベストセラー小説を映画化した『暁に祈れ』が絶賛公開中。映画の公開を記念して、本作を絶賛する映画監督の松江哲明氏、ライター・デザイナーの高橋ヨシキ氏によるトークショーが行われた。ふたりは、本作の監督であるジャン=ステファーヌ・ソヴェールによる長編前作『ジョニー・マッド・ドッグ』を引き合いに出しつつ、圧倒的なオリジナリティを持つ『暁に祈れ』の魅力をたっぷり語り尽くした。

松江哲明監督は、本作のジャン=ステファーヌ・ソヴェール監督の前作にしてリベリア反政府軍の少年兵達の姿を実際の元少年兵達に演じさせた大傑作『ジョニー・マッド・ドッグ』日本公開当時に衝撃を受けて以来の監督作品のフォロワー。その上で、『暁に祈れ』を観た時の感想を「『ジョニー・マッド・ドッグ』の監督の新作なら必ず観ないといけないと思っていて、観た感想はいい意味でのぐったりです」と振り返る。高橋ヨシキ氏は、「監獄映画は『ミッドナイト・エクスプレス』とか色々あるけど、この映画は異常な迫力がよかった。自分では体験したくないことも沢山体験できて、「スター・ツアーズ」みたいなまさに“ライド映画”」と本作の魅力を語る。松江監督も、「『ジョニー・マッド・ドッグ』もまさにライド映画。乗りたくないけど乗っとかないといけない、疑似体験映画で本当に凄かったから、次はどんなものを撮るんだろうと待っていたんですが、『暁に祈れ』まで10年ぐらい経ってしまって。この監督はバンバン撮るんじゃなくて、自分でじっくり取材したい人なんだなと」と両作の共通点を挙げる。松江監督は、ソヴェール監督作品の特徴として「体験した当事者に演技をさせるんですよね」と紹介。高橋氏は「例えば『タイタニック』で船が沈没しても誰も沈んだことは実感しない。(有名な俳優など)知っている人がいることでライドの妨げになる」と、本作で実際の元囚人を多くキャスティングしたことにより観る者が得られる“没入感”が増すことを指摘。一方で、「この映画に出てくる元囚人達はFacebookで探したというけど、実際はこんなに入れ墨を入れまくっている人ばっかりじゃないだろと(笑) そこはちょっと盛っているよね」とツッコミも飛び出す。

松江監督は、原作者であるビリー・ムーア本人が映画のある場面に出演していることについて「こうきたか…という。観る人には地獄のような壮絶な経験をさせる一方で、映画というものを(映画の題材である)本人にとっての通過儀礼としても捉えているんだろうなと思いました」と分析し、その上で、「この監督の映画はこれからも観ていこうと改めて思いました」と熱く語る。高橋氏は「バイオレンスシーンの描き方は、それを嫌いと思っている人とそうでないかで差が出ます。ハリウッドではCGとかでごまかしてむしろ暴力をよしとする向きもあるけど、この映画では殴られた顔がパンパンに腫れちゃって、監督は本当に暴力が嫌いなんだろうな」と、暴力描写の描き方を指摘。松江監督も「殴られたら本当に痛いのよと伝える意味で、バイオレンス映画を作るならこういう方向性は正しいですよね」と同意する。

さらに、実際の出来事を映画にしていることについて、高橋氏は「『ジョニー・マッド・ドッグ』もそうだけど、本当に経験した人に話を聞いてそれを演じてもらっていて、映画のセリフも含めてとても想像では描けないことが入っている」と指摘。松江監督も、「途中で話が逸れていくことがあるけどそれが本当のことだからで、それがこの監督ならではの面白さなんです」と続けると、高橋氏も「特異な経験をしている人達は話を盛るのが本当に上手い(笑) 2作とも監督がそれを上手くすくい上げて映画にしているんでしょう」と、ソヴェール監督のコミュニケーション能力の高さを指摘。その上で、松江監督は主人公ビリーについて「ビリーはまさに3歩進んで2歩下がる状態で、ちょっとずつクリアしてもまた失敗して、物語がどっちに転ぶのか分からないという魅力。実話だから死んではいないんだけど、映画を観ていてこの人死ぬんじゃないか…と思わせてくれる。そのまどろっこしさが、監督いいな…って」とソヴェール監督をべた褒め。高橋氏も、「この監督の映画は、観る側が先回りして安易なオチを考えても無駄かもしれない(笑)」と同意する。

最後に、高橋氏は「就職、転校、誰かの結婚式、友達に誘われたクラブ…これらは言ってしまえば刑務所に入るのと同じ経験(笑) この映画の牢名主みたいな奴がいて、“ほら新入りが来たぞ”を見られる機会ばっかりでしょ? 僕らは殺伐とした時代を生きているんです」と持論を展開。松江監督も、「自分の身にもしも何かあった時に、この映画を観たことが活きてくるかもしれない。この映画は“どんな状況でもやっていくしかない”映画。映画がそれを描いてくれていると、それに感謝する時が来るかもしれないですね」と同意した。

【ストーリー】
ボクサーのビリー・ムーアは、タイで自堕落な生活を過ごすうちに麻薬中毒者になってしまう。ある日、警察から家宅捜索を受けたビリーは逮捕され、タイで最も悪名高い刑務所に収容される。そこは殺人、レイプ、汚職が横行する、この世の地獄のような場所だった!死と隣り合わせの日々を過ごすビリーだったが、所内に設立されたムエタイ・クラブとの出会いが彼を変えていく。ベストセラー自伝小説をベースにした真実の物語。

『暁に祈れ』
12月8日(土)ヒューマントラストシネマ渋谷&有楽町、シネマート新宿ほか全国順次!
配給:トランスフォーマー
(C)2017 – Meridian Entertainment – Senorita Films SAS
公式サイト:http://www.transformer.co.jp/m/APBD/

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