ジェームズ・マンゴールド監督「『LOGAN/ローガン』は暴力的であってもハートに溢れている」


マーベル映画最新作、“最後”のウルヴァリンをヒュー・ジャックマンが全身全霊で演じる『LOGAN/ローガン』が6月1日(木)に公開となる。

5月24日に開催されたジャパンプレミアに続き、ヒュー・ジャックマンとジェームズ・マンゴールド監督による記者会見が実施された。

Q:ヒュー・ジャックマンの代名詞ともいえるウルヴァリン役を引退しよう考えたのはいつだったのでしょうか。そして最終作『LOGAN/ローガン』が完成した今の心境をお聞かせください。

ジャックマン:『ウルヴァリン:SAMURAI』(2013)を撮り終えた直後からジェームズ監督と今回の映画について話し始めました。映画の方向性を話し合う中、本作が私の演じるウルヴァリンの最終章とするのに最も相応しい終わり方になると感じました。最高のパーティから退席するタイミングは判断が難しいところですが、ジェームズ監督だったから一緒に終わらせたいと思ったんです。今回が最後になりますから単なるシリーズの中の1本ということではない、新鮮で新しくて、より深い最高の作品にしたいという思いで臨みました。完成品を見た時、私が考えていた以上の映画になっていて、ようやく安堵したのを覚えています。ジェームズ監督には世界最高の贈り物を頂きました。今の気持ちはとても平和的で、幸せな気分です。

Q:17年間ウルヴァリンを演じてきたことは、ヒュー・ジャックマンさんにとって、どんな経験になりましたか?

ジャックマン:イギリスの演劇界で有名な演出家のトレバ―・ナンに「舞台に出る人は5つくらいルーツになる作品を持つべき」と言われたことがあります。ローガンこそが私のルーツだと思いました。キャリアだけではなく、人生にとっての喜び、感謝すべき役でした。実は最初のエックスメンのとき、私はコミックを読んだこともなくローガンという存在も知りませんでした。こんなに長く演じることになるとは本当に驚きです。今回の映画は、私にいつか孫が生まれ、「おじいちゃん、どの「X-MEN」を観たらいいの?」と聞かれたときに、『LOGAN/ローガン』のDVDを渡して「これを観ろ!」と言える決定版にしたかったのです。

Q:ヒュー・ジャックマンさんとは『ウルヴァリンSAMURAI』に続き3度目のタッグとなりました。本作でヒュー・ジャックマン演じる最後のウルヴァリン作品を手掛けた想いを教えてください。

ジェームス監督:ヒュー・ジャックマンと、どのような作品を作りたいか話し合った際、このキャラクターを称える、名誉を与える作品にしたいと話しました。これまでのヒーロー映画のように、単に悪者から町や惑星を救うようなものにはしたくなかったんです。そのためには従来の作り方や伝統を壊し、新しいものを作る必要がありましたし、ヒューも私もそれを望んでいました。自分を解放し今までとは異なる、違った作品にしようと望んで作りました。

Q:ダフネ・キーン演じる少女ローラは、非常に強いインパクトを残すキャラクターで彼女の演技力には圧倒されました。彼女との魅力はいかがでしたか?

ジェームス監督:私が役者に求めるものは思考力です。言葉がないシーンでもカメラを通してその人物が何を思っているか分かる人を求めています。彼女に関してはお父さんがiPhoneで送ってくれた映像を見ました。彼女は何より目が生き生きし、彼女の感じていることをカメラを通して私たちも感じる演技をしていました。素晴らしい才能が溢れる役者です。

ジャックマン:本作は家族や愛がテーマになっているのでローラはとても重要な役でした。ローガンにとって20人の敵と戦うことは簡単でも、人を愛するとか、人と繋がることは大変なこと。11歳の女の子を登場させることは素晴らしいアイデアだと思いましたが、ウルヴァリンの激しさや怖さを持ちながら、ロードトリップに出て少しずつ心を開いていく演技ができる女の子をどこで見つけてくるのか心配でした。僕は48歳の俳優ですが、この演技はハードルが高いと思いました。彼女はそんな難しい役を見るからに楽々と演じて、献身的な素晴らしい女優だと感じました。ダフネ・キーンを見つけられたことは奇跡ですね。

Q:『X-MEN』シリーズは、人間から迫害されるミュータントを、マイノリティーたちのメタファーとして描かれています。本作でも現在のアメリカの世相を反映していますね。

ジェームス監督:私たちが本作を作っているとき、アメリカでは大統領選挙の期間でした。通常、私は映画の素材を準備する際に、周りで起きていることを盛り込むようにしています。劇中に出てくる、アメリカとメキシコの国境の壁のシーンで、子供たちが「USA!USA!」と叫ぶシーンがありますが、あれは撮影の当日に付け加えたものなんです。非常に悲しいことに最近の映画は空っぽな空虚な作品が多いです。仮にある作品が今の世相を反映させたり、問いかけたりすると、それが大胆であると思われる状況になっていて、私はそういった世相を反映させるということは、常にそうあるべきだと考えています。今の映画の多くはキャンディーのように口に入れたら溶けて何も残らないというものが多いですが、私はそういう作品を作ることに興味・関心がないんです。世の中を反映した、適切な題材で挑発的なものが良いと思っています。

ジャックマン:ドナルド・トランプ氏が大統領選の前のディベートで“壁”の話をしたとき、私たちの脚本にはすでに壁の描写がありました。SF的な、もっと未来に起こることとして書いていたので、誰か僕らの脚本をリークしたのかな?と思いました。これは監督がいかに政治的なことを考えて、世の中を見渡しているという証拠だと思います。

Q:本作はシリーズ初の「R指定」作品となりましたが、その理由は?

ジェームス監督:今回は制作に入る前からスタジオにはR指定で撮りたいという事を伝えていました。多くのウルヴァリンファンが、何も制限がかかっていない彼の作品を望んでいたいう事もありますが、R指定にすることによって大人向けのドラマを撮りたいという思いがありました。事前に了承を得ていたことで、そういった暴力描写や言葉遣いといったしがらみから自由になり、自分のアイデアを思い通りに描くことが出来ました。本作の冒頭シーンでは、ローガンとチャールズ・エグゼビアが話し合うシーンが7分ほどあります。もし、これが子供向けの映画だったら、このシーンは1分半くらいに縮められてしまいます。子供たちには、2人の老人が身体の衰えについて話し合うシーンなんて我慢できないでしょうから(笑)今回、私にとって大切だったのは成熟した作品を作ることでした。本作は今までいろんな地域で公開され日本が最後の地域になりますが、これだけ大人向けのテーマを扱いながらも、本作が物議をかもしたという話は聞いていません。それはきっと作品がハートに溢れていて、ヒュー・ジャックマンたちの魂のこもった演技をしているからだと思います。私自身、子を持つ親なので分かりますが、とても暴力的な作品であっても、愛や犠牲といったことを肯定するような作品だったら観てもらいたい思います。今は子供向けの作品であっても、殺戮や物欲主義、他の文化を侵略するような作品が多いです。本作はそういった作品より暴力的であってもハートに溢れているものになっていると思います。

【ストーリー】
ミュータントがほぼ絶滅し荒廃した近未来。ローガンは治癒能力を失いつつあった。そんなローガンに年老いたチャールズ・エグゼビアが託した最後のミッションは、絶滅の危機にあるミュータントの唯一の希望となるローラという謎めいた少女を守ること。強大な武装組織の襲撃を逃れ、車で荒野を旅する3人の行く手には、想像を絶する運命が待ち受けていた。

『LOGAN/ローガン』
6月1日(木) 全国ロードショー
20世紀フォックス映画配給
(C)2017Twentieth Century Fox Film Corporation
公式HP:http://www.foxmovies-jp.com/logan-movie/

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