イタリア産ダークヒーロー爆誕!『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』ガブリエーレ・マイネッティ監督インタビュー


イタリア発のダークヒーロー・エンターテインメント映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』が、5月20日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国にて公開となる。

今回、映画の公開を直前に控え、本作でメガホンをとったイタリア映画界の新星、ガブリエーレ・マイネッティ監督にインタビューを敢行!いろいろと興味深いお話を伺ってきました!

 

(取材:ジャンクハンター吉田・梅崎慎也)

 

本作は永井豪原作アニメ『鋼鉄ジーグ』をモチーフにして作られたイタリア発のダークヒーロー・エンターテインメント作品。2016年のイタリア・アカデミー賞と呼ばれているダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で、長編デビュー作ながら16部門にノミネートされ、結果的に新人監督賞を含む最多7冠受賞という快挙を果たした快作である。

 

—もう聞かれ過ぎてうんざりしてるかもしれませんけど、敢えて単刀直入にお聞きします。なんで『鋼鉄ジーグ』だったんですか?永井豪作品で言えば他にも「マジンガーZ」とか「ゲッターロボ」もあると思うんですが。

 

ガブリエーレ・マイネッティ監督(以下、ガブ監督):『鋼鉄ジーグ』は他のメカものと違い、主人公の司馬宙(しばひろし)が単なる操縦士ではなく、彼自身がロボットの頭になるというところが斬新だったんだ。でも彼は、一人の力だけでは『鋼鉄ジーグ』に変身することは出来ないんだよね。

 

—ヒロインの卯月美和(うづきみわ)が支援機のビッグ・シューターから射出しないと完成しませんよね。

 

ガブ監督:そこが僕の映画のメタファーにもなっていて、本作でも主人公のエンツォは「ジーグ」になるためにアレッシアという存在が絶対に必要なんだ。実際に劇中でアレッシアが‟あなたを助けたい”という意味で「私はパーツを投げたいのよ!」と台詞で言わせているんだけど、その関係性がまさに『鋼鉄ジーグ』なんだ。

 

 

—監督はこのアニメに強く影響されていますが、これは原体験から来ているんですか?

 

ガブ監督:10歳くらいの頃に見た『鋼鉄ジーグ』のアニメに強く影響されている。当時は『鋼鉄ジーグ』のマグネットでパーツを付け替えできる玩具を持っている人は英雄だったんだぜ!あれを所有する喜びは「マジンガーZ」の比ではなかったね(笑)この映画のキャンペーンで永井豪先生にも会うことが出来たんだけど、もともと『鋼鉄ジーグ』は玩具メーカーのタカラからマグネットでパーツの着脱が出来るロボットのアイデアが欲しいという所から企画がスタートしたと聞いてとても驚いたよ!

 

—あの玩具は日本でも復刻されるほど人気ありましたからね!

 

ガブ監督:玩具先行の企画ということだったけど、永井先生は1人のアーティストとして主人公の内面や心の問題などを詩的に描いていて、素晴らしいクオリティの作品になっていると思うよ。ジーグの司馬宙ってあまりヒーロー的な人物ではなく、ナルシストだし、自分勝手でエゴの強い男の子だった所も個人的に好きなポイントだね。そういった要素から、僕は今回の映画を語るテーマは『鋼鉄ジーグ』をおいて他にないと思ったんだ。「デビルマン」をはじめ、永井作品はどれも素晴らしく最高なのは間違いないけど、今回の映画には『鋼鉄ジーグ』がピッタリなんだよ!

 

 

—本作でアレッシアは『鋼鉄ジーグ』のDVDを片時も離さない熱狂的なファンとして描かれていますよね。本編中で彼女が「昔は鋼鉄ジーグも人気があって再放送もしていたけど、今ではそれもされなくなったからDVDを持っている」というような台詞を言いますが、個人的にグッと来るものがありました。イタリアには彼女のような人が多いんですか?

 

ガブ監督:実はその辺、ちょっとフィクションが入っていて・・・イタリアで売られてる『鋼鉄ジーグ』のDVDって海賊版だったんだよ(笑)でも最近、この映画がきっかけで正規のDVD-BOXが発売されたんだ!

 

—そうだったんですか!イタリアのオタクたちは海賊版で観てたんですね!?

 

もしくはyotubeでね(笑)イタリア語吹替えのアニメが全部アップされてしまっているんだけど、今回DVD-BOXが発売されて本当に嬉しいよ。そうだ、オタクで思い出したんだけど、映画で使われているアニメにちょっとしたエピソードがあるんだ。この映画を観たイタリアのオタクたちから「劇中で流れるアニメの音がオリジナルではないじゃないか!?!」ってツッコまれたんだよ。

 

—どういうことですか?

 

ガブ監督:実はアニメの使用権は勿論取っていたんだけど、それって映像の許諾だけで、オーディオの方までは取れなかった。本編中で流れるアニメのBGM、台詞、エフェクトは全て僕たちで新しく作り直しているんだよ。ちなみに全てのキャラクターの台詞はエンツォ役のクラウディオ・サンタマリアが声色を変えて演じ分けているんだ(笑)

 

—ええー!!!本当ですか!?それは気付かなかった!

 

ガブ監督:主題曲の権利料がすごく高くてね。この映画には80年代のイタリアのポップスもたくさん流れているんだけど、それを全部足しても主題曲の方が高かったよ(笑)

 

—そんな裏話があったとは・・・。これはもう1回見直さなくちゃいけないですね!

 

ガブ監督:ありがとう!クラウディオには本当に助けられたよ(笑)

 

 

—本作を拝見してふと思ったんですが、主人公のエンツォは放射性廃棄物の影響で超人的なパワーを得ることになりますけど、もしかして『悪魔の毒々モンスター』(1984)からインスパイアされてませんか?

 

ガブ監督:(拳を突き出して握手を求める)その通り!それを言ってくれた日本人はあなたが初めてだ!

 

—大好きな映画なんでまさかと思いましたけど、やっぱりそうだったんですね!

 

ガブ監督:『悪魔の毒々モンスター』は最高だよね!でも映画への影響はほんの少しだけだよ(笑)

 

—バトルシーンも色々なアニメや映画のエッセンスが端々に感じられました。

 

ガブ監督:これだという作品はなくて、撮影しているときはとくに意識していなかったんだけど、完成した映画を改めて見直すと、確かに自分が見てきた物や影響されてきた物が無意識に作品に反映されていると感じたよ。「そういえば自分は『北斗の拳』も好きだったな」とかね(笑)どの監督たちもきっとそういう事があるんだろうなと思ったよ。ただ、とあるシーンだけは意識的にハッキリと引用した箇所があって、そこではブルース・リーとチャック・ノリスが対決する『ドラゴンへの道』のクライマックスの対決を思い描きながら撮影に臨んだよ。

 

—また素晴らしい作品から引用しましたね(笑)この映画は監督の趣味趣向が爆発していて愛すべき作品になっていると思います!

 

ガブ監督:はははは、ありがとう!僕にとって大好きなアニメや漫画やホラー映画などは何かを表現するためのツールの一つ。物語って今を生きている自分を語る必要性があると思うし、そうでなければ映画を作る意味なんてないと思っているよ。

 

—金言ありがとうございます!もう1回細かい所まで観直して、監督の人生を噛み締めたいと思います!

 

『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』
5月20日より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!!
配給:ザジフィルムズ
(C)2015 GOON FILMS S.R.L. Licensed by RAI Com S.p.A. – Rome, Italy. All rights Reserved.
公式HP:http://www.zaziefilms.com/jeegmovie/

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