映画『鷹の爪8 吉田くんの×(バッテン)ファイル』 FROGMAN監督インタビュー(後編)

フロッグマン

人気クリエイターのFROGMANが監督、脚本、声と3役をこなしながら最初の劇場版公開から10周年を迎えた『秘密結社 鷹の爪』。今年で劇場版シリーズ5作目を迎えた最新作『鷹の爪8 吉田くんの×(バッテン)ファイル』が現在全国拡大公開中。

前回に引き続き、ジャンクハンター吉田がネタバレ上等モードで、FROGMAN監督を直撃インタビューを敢行!これからの『鷹の爪』プロジェクトにも触れる衝撃の後半戦!

※インタビュー前半はこちら

FROGMAN:『Xファイル』みたいなドラマが長期に渡って続いたのも好奇心旺盛な探究心をくすぐってくれたからだと思うんですよね。それってオトナも子供も謎めいたものに対して、やっぱり答えを求めているからなんだろうと。特に子供は感受性強く色々なことに影響を受けやすいし、冒険心の強さも未知数ですのでそれはオトナになっても不変的。そこで吉田くんを通して……まぁきっとストーリーテラー的に吉田くんを活躍させると思うんですが、それこそ『Xファイル』のモルダー捜査官みたいに展開して行ければエデュケーショナルな『鷹の爪』が生まれるような気がするんです。

―― 浸透させるまで相当な時間かかりそうですね。

FROGMAN:FLASHアニメで散々下積みを経験しましたから時間かかるのは慣れてます(笑)。『鷹の爪』はマンネリ化してきていると言う方もいらっしゃいますが、実際ネタは全然枯れてないでんですけどね。時事ネタも入れたりとかアイデアは山のようにありますし、アニメにできてないだけだったりしてます。その一方で、別にマンネリ化したからスピンオフで謎を紐解く新しい『鷹の爪』を作ろうという構想があるわけじゃないってことだけは知っておいてもらいたいです(苦笑)。

―― そういえば『鷹の爪8』はプロダクト・プレイスメントがほとんどなかったように感じましたが。

FROGMAN:自社コンテンツとかを差し込んだ程度で今回は積極的には展開しませんでした。予算を一番使うCGパートのようなシーンも時間なかったこともありましたし採用できなかったんですが、物語を重視した結果になりますが僕自身、『鷹の爪8』はこれで満足してますね。正直69分の尺でも長いと思ってまして……実はバッサリと切って60分だったんです。劇場で公開する場合は80分ぐらい欲しいと思うんですけど、詰め込みすぎても子供をメインターゲットにしてますので飽きられてしまっては意味がない。里美と吉田くんがビデオを返すシーンやモレルダーとナスカリーがタイムマシンに乗り込むシーンはカット。子供向けなので恋愛要素を連想させるシーンは不要とのことで切ってくれと言われたんで(苦笑)。まぁ、それを考えたら正解かなと思ってます。劇場版『クレヨンしんちゃん』に対してオトナが「面白かった!」と騒いでいるのは感動要素を入れているからじゃないかという分析もありましたし、昔のアニメって子供向けに作られていたので恋愛要素なんて皆無でしたから。ぶっちゃけますと……作っている途中で子供向けに振り切るのか、オトナ向けにするのか相当悩んで完成させたんですけどね。『鷹の爪8』を作ることで一番学んだ部分であり、僕自身気付かされた部分でもありました。ホラー要素を強くした内容から随分変更してしまった『鷹の爪8』ですけど、『学校の怪談』みたいにしてお化けを吉田くんが倒す話にするつもりだったのがまさかの『インディ・ジョーンズ』+『グーニーズ』+『Xファイル』に。今が旬な『ゴーストバスターズ』的にする案もありましたけどね(笑)。

―― 個人的にお気に入りシーンは新日本プロレスの真壁刀義選手と本間朋晃選手の登場箇所なんです。爆笑しちゃいました!

FROGMAN:新日本プロレスに『鷹の爪』の大ファンの方がいまして、あちらからアプローチがあったんです。両国国技館で真夏の祭典と言われる『G1クライマックス』の観戦時に会場で流れる注意喚起のマナーアニメを作ることになりました。その流れでキャラクターが立っている真壁選手と本間選手を起用して異色なゲストキャラになったんです。お二方とも本当にユニークな方で、真壁選手は表現が上手い、というか頭の回転が早いので適応力も高く、本間選手はあのしゃがれ声ですし何言っているかわからないような天然キャラが楽しく、アンバランスなコンビは面白かったですね。

―― プロレスファンとしては最高でした。2人とも試合の時のまんまな姿でしたし。『鷹の爪8』はキャストの方々も豪華だったんですが……アドリブ満載だったんじゃないですか?

FROGMAN:特に若本規夫さんはアドリブだらけでしたね(笑)。

―― え? それは……もしかして暴走しまくっていたってことなんですか?

FROGMAN:いい方向で暴走してました(笑)。グレイ司令官という役なんですが、「こんな台本つまんねーよ! 破天荒にしたいんだろ? 俺が破天荒に演じてやるよ!」と言いながらも台本を読んで現場に来てないのがわかったので、エンドクレジットではヨマーズ司令官に無理矢理変更しました。アドリブだらけだったこともあり、若本さんのマッチョな声に合わせて司令官のビジュアルもマッチョなキャラクターへと絵を描き直したぐらいです(苦笑)。若本さんのパワフルさが功を奏して、その結果、司令官が生き生きしてくれたので本当にイイ仕事してもらえましたよ。

―― 若本さんの暴走……想像しただけで笑えます!

FROGMAN:最初に描いていたグレイ司令官はもう少し陰険な雰囲気で結構地味な感じだったんですよ(笑)。若本さんが命を吹き込んでくれてから大きくマッチョに。途中から若本さんノリノリになってしまい、アドリブだからか、はたまたサービス精神旺盛だからなのか分からないんですがしゃべくりまくりモードに突入してしまい……本編で若本さんのセリフは大幅にカットさせて頂きました。若本さんのセリフをカットしなかったら、『鷹の爪8』の尺は3分延びて72分になっていたほど……と説明すれば若本さんのテンションの高さが伝わるかと(笑)。

―― さすが若本さん! モレルダーとナスカリーを演じた杉田智和さんと松本梨香さんもアドリブ多かったんじゃないですか?

FROGMAM:お二人にはアドリブは随所にお願いしました。特に杉田さんには沢山お願いしましたね。そういえば司令官の下っ端宇宙人役の声をモン吉さんに演じてもらったんですが、モン吉さんが演じるってことで演じる宇宙人の絵も描き直しました。

―― 若本さんみたいですね(笑)。

FROGMAN:彼は八王子出身なのに訛っているんです。そして素朴な演技でしたので描き直してアクセントを付けたことで結果的に他キャラとの差別化ができましたし、エンディングで彼の『一期一会』が流れるわけでイイ感じの〆になりました。

―― そういえば子供をメインターゲットにしているはずなのに相変わらず若い人には分からないような『東京コミックショー』ネタを押してきたりと、知っている人だけ分かってくれればOKなFROGMANテイストもありましたね。

FROGMAN:『東京コミックショー』なんて僕らが子供の頃さんざん観てきたものじゃないですか。きっと親御さんたちに分かってもらえるはずかと(笑)。まぁ、僕が声をあてるセリフはマニアックな部分が多々ありますが、こうやって吉田さんみたいに知っている世代にも「クスッ」っと笑って頂けたら、僕自身のガス抜き的息抜きになるんです。

フロッグマン3

―― 『鷹の爪』も10年前から追いかけてきましたが、早くも10周年になってしまいましたね。そろそろ実写なんかはどうですか?(無責任発言)

FROGMAN:一応実写化の話をあげたことはあるんですよね。そしたら『鷹の爪』をそのまんま実写化するとなると、予算は10億円はくだらないぞとの返答が。敢えてCGとかもチープに作ったりして安っぽさを出したりするのもいいんですが、僕自身が実写畑からこのショウビズの世界に入ってますので異常にこだわってしまうと思うんです。まずはロケ現場探しのロケハンからスタートする部分から時間かけたりとかね。

―― もうそれは決まっているでしょう? 島根しか考えられないですし。

FROGMAN:いや~、実写化するとなったら島根だけじゃ収まらないですから全編島根で撮るわけにいかないので、全国色々探しますよ。FLASHアニメよりもしっかり作らないといけないので「スグできました」じゃ、さすがに無理なんで、やるとなったらみっちりと時間かけます。やらないといけない時がくるまでお待ちください(笑)。まだアニメでネタは沢山ありますんでね。実はハリウッド映画とのコラボレーションも水面下で進んでいるんです。発表したら誰もがビックリする作品ですが……既にパイロット版は完成済だったりしてます。ハリウッド用のプレゼン向けパイロット版なのに恐ろしいぐらい予算費やしているんですよ。

―― もしかしてCGバリバリ入れたりとか?

FROGMAN:そうです。とあるメジャーなアニメ制作スタジオへお願いして作ってもらいました。まだ見せられないのが残念ですが、もう少々発表をお待ちください。映画好きでしたら誰もが知っている作品とのジョイントですので驚かせますよ!

―― 早い発表を期待して待ちます! 10周年迎えた『鷹の爪』は実写構想はまだまだ先としても直近なハリウッドとのコラボレーションだけではなく、今後の展開や展望というのは他にありますか?

FROGMAN:今後『鷹の爪』は僕が作り続けようとは思っていないんです。いろんな人に『鷹の爪』を作ってもらってもいいんじゃないかと。

―― つまり『鷹の爪』フランチャイズ化?

FROGMAN:それを今後やっていきたいんですね。戦略として「FROGMANが作る『鷹の爪』の時代は終わり」にして、もっと多くのクリエイターたちが『鷹の爪』を作ってもいいと思っているんですよ。『鷹の爪』そのもののコンテンツをフランチャイズ化したことで広がる何かを期待しているんです。これからはオトナに向けた『鷹の爪』も作りたいし、総統を使って老後の幸せとかロマンスとかやったりでもいいですし、ネタ切れになったわけじゃないですけど折角10年やってきたアニメのポジションまで来たわけですから僕だけが作るんじゃなくて他の方が作った『鷹の爪』を僕自身観たい部分もありますし。「やってみたい!」と名乗りあげてくれるクリエイターがドンドンと登場してくれたらいんですけどね(苦笑)。その他では人口知能AIに興味あるんですね。技術が発達したおかげでこれからその必要となれる時代が来ると思うんですよ。バーチャルに吉田くんや総統を登場させたいんです。例えばバーチャルの吉田くんがSNSをやっていたりとか、本当に吉田くんそのものが存在してるようになれるんじゃないかと思ってます。世界に先駆けてこういうバーチャルキャラを登場させたい構想を抱いてます。吉田くんにSNSで話しかけたらスグにAIが対応して返事が来たりとかいつか実現できる日が来ると信じてるんですけどね(笑)。VRにも関心があるんですが、そのAIとVRの仮想空間をミックスさせたら面白いコンテンツが『鷹の爪』で産まれると想像できるので、こちらも時機が訪れたら挑戦してみたいです。まぁ、VRに関してはDLE社内で『鷹の爪』じゃない作品で何か作れないかと実験的に模索してますので、そちらが上手くいけば実現の可能性も高いです。

―― さっき書店で買ってきたんですが『クソアニメと呼ばれて10年 ~「秘密結社鷹の爪」10年史~』なるムック本……タイトルが挑発的で最高ですな!

FROGMAN:とりあえず10周年だから作ってみようと。いつまでもウィキペディアに頼ってられないからね。

―― え? ウィキペディアで『鷹の爪』の世界観をチェックしてるんですか?

FROGMAN:そりゃそうですよ。どこよりもファンの方々が熱く作り込んでくださっているので、資料を引っ張り出してチェックするよりも遥かに便利ですからねぇ。

―― クリエイター本人がウィキペディアでチェックするというまさかの展開(笑)。

FROGMAN:それでね、ウィキペディア以上のものがないわけで古くから付き合いある扶桑社の編集者にお願いして作ってもらったんです。

―― 10年近く前に講談社から出た『蛙男商会の本 THE FROGMAN WORLD』が最強だと思ってました。まだ買ったばかりですのでこれから読みますが、情報もアップデートされてますから『鷹の爪』ファンはマストバイな気がします。

FROGMAN:今回は10周年のメモリアルだし、10年もこんな酷いクソアニメが続いたのは改めて奇跡的だなっていうのもあったし、いろいろと周囲からバッシングされつつも頑張ってこれたのは支えてくれた多くのファンがいたからこそなので、それら諸々を総括という形で作りました。

―― ん? FROGMAN監督らしくない作りですね。このムック本……広告が一切入ってないじゃないですか! 表2、表3、表4が無駄遣い!

FROGMAN:ああー、その手がありましたか! うっかり忘れてましたよ(苦笑)。

―― 広告入れてないのがパンクな精神かなって思いましたが違うんですな~。

FROGMAN:完全に忘れてましたよ。

―― 「クソアニメと呼ばれて」っていうタイトル名は何かに対して戦っている気がしますが(笑)。

FROGMAN:本当は「ザマーミロ」ってタイトルに入れたかったんですけど却下されてしまったので「クソアニメ」にしました。

―― 最高のタイトルだと思いますよ。「サマーミロ」だと喧嘩売りすぎですので丁度バランス取れている気がしますね。

FROGMAN:『鷹の爪8』の観賞共々こちらのムック本も是非お買い求め頂ければ幸いです。ファンの方でしたら絶対満足行く完成度になっているはずですので是非!

<おわり>

鷹の爪8ポスター

『鷹の爪8 ~吉田くんのX(バッテン)ファイル~』
8月20日(土) 先行公開!8月27日(土) 全国拡大公開!
配給:DLE/プレシディオ
(C)「鷹の爪8」製作委員会
映画オフィシャルサイト:www.takanotsume.jp/xfile

※下記日程で舞台挨拶実施。詳細はwebサイトをチェック
・9月3日(土)TOHOシネマズららぽーと富士見にて16時回
・9月4日(日)池袋HUMAXシネマズにて14時回

■クソアニメと呼ばれて10年 ~『秘密結社鷹の爪』10年史~
扶桑社より発売中
http://xn--u9j429qiq1a.jp/1634/

■鷹の爪団のSHIROZEME in 国宝松江城 2016
9月17日、土曜日、国宝松江城にて開催
http://shirozeme.com/

コメント

タイトルとURLをコピーしました