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映画『アトムの足音が聞こえる』冨永昌敬監督インタビュー

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ドキュメンタリー映画『アトムの足音が聞こえる』は、『乱暴と待機』『パンドラの匣』など劇映画や、相対性理論や菊地成孔のPVなども手掛ける冨永監督が、アニメ『鉄腕アトム』の音響を務めた伝説の音響デザイナー大野松雄の姿に迫った音楽ドキュメンタリー。今回は、冨永監督に制作の裏側についていろいろとお話を伺ってきました。

—本作を制作するまでの経緯を教えてください。
冨永監督「プロデューサーが大野松雄さんのファンというこで、お話しをいただいたのがきっかけです。僕自身は(大野さんのことを)よく知らなかったんです。「鉄腕アトム」の音響効果が凄いものだったということは知ってましたけど、周りからも「普通、(その人のことを)知らなかったら断るのに、それをやったのが面白い」」って言われました(笑)  要するに知らないのにドキュメンタリーを撮ったということですよね。撮りながら勉強していった感じです。」
—作品の前半で、様々な音響デザイナーにインタビューしていますが、作品を作りながらしながら勉強したということでしょうか?
冨永監督「そうですね。」

—音響デザインという表舞台から消えた今でも伝説的な大野さんに実際に会われていかがでしたか?
冨永監督「大野さん自身は表舞台に立ったことなんか無いと思っていると思います。勝手に鉄腕アトムの音響が有名になってしまっただけで、基本的に裏方なので、ミュージシャンでもない。なんだか捉え所のない方なんです。また、そういう自分を売り出そうともしていないんです。なので、表舞台からいなくなったというのはニュアンスが違って、好きにやってるんだから放っておいてくれというのがあるんだと思います(笑) なので、自分にとって興味のあることがある時は進んで前に出てきて、そういう時に、多分、(大野さんは)ふと気付くんです「自分は伝説の人間だったな」と(笑) 別に意図的に表舞台から姿を消したということではなくて、借金から夜逃げしただけで(笑) そういう人でしたね。でも、TVアニメの音響に凄く影響を与えた方だと思うんですよ。先駆者というか。それは確かだと思います。でも、大野さんは、アニメの世界には、ほんの一瞬鉄腕アトムの時しかいなかったんです。2008年の東京アニメフェアで大野さんは功労賞をもらっているんですけど、アニメファンの方々から伝説的な存在として見られているという理由を自分で分かっているんです。それは鉄腕アトムしかやっていないからだだと(笑) だから自分はレジェンドになったんだと言っていましたね(笑) その後もずっとやっていたら伝説にならなかったと。「鉄腕アトム」の仕事も、断るつもりで無理な条件を言ったら、それが通ってしまって、引っ込みがつかなくなってやったというくらいですから(笑)」
—最初はどのような感じでやりとりされたんでしょうか?
冨永監督「オレのことなんか撮っても面白くないと思うよ」と言われましたね(笑) ご本人もドキュメンタリーを撮っていたからだと思います。「オレだったら、オレみたいな奴は撮らないな」みたいなことをずっと言ってました。ある程度は本心で、ある程度は照れ隠しかもしれないですけど。でも、ある程度本心だったみたいでそれが大変でした(笑) インタビューしていても「そんな質問してどうするの」とか説教みたいなことをよく言われました(笑)。」

—監督はドキュメンタリーは初めてですか?
冨永監督「今回で2本目です。本当は撮りたかったんですけど、機会がなかったんので。正直、大野さんだからということではなくて、ドキュメンタリーが撮れるというこが理由でした(笑) それで飛び着いたら厄介な人だったという。でも、よかったですね勉強になりました。」
—冨永監督の作品の魅力のひとつ音というものがあると思いますが、音の演出はどのようにされていますか?
冨永監督「先に考えがあってやっている訳ではなくて、音の仕上げの時に、ちょっとやってみたら案外聞こえ方が面白くて、そのまま使ったり。やっていくうえで発見していくことが多いです。」
—音楽や効果音とかを作る時は結構立ち会われたりしますか?
冨永監督「スタッフに任せてもいいんですけど、一緒にやったほうが面白いので立会いますね。一緒にいたほうが面白いことを思いついたりするので。音楽を録音する時も立会いますね。
別にミュージシャンに注文できるほど音楽は知らないんですけど(笑) 事前にイメージをハッキリもって「じゃあ、これをやってください」というのは僕はできなんですよ。その場で思いつくことがあるので。現場で初めて見えてくることが多かったりするので。音響のことではないんですけど、脚本とかも書くのはイヤなんです(笑) その時にならないと分からないので。でも要るじゃないですか。なので、プレゼン用という感じで書くんですけど。ドキュメンタリーは脚本を書く必要がないので、それがすごく助かります(笑) 楽ではないんですけど、少なくも設計図のようなものを書く必要はないで。その分、現場にしわ寄せがきたりしますけど(笑)。」
—作品を観ると、大野さんと冨永監督のスタンスは非常に似ている思いましたがいかがでしょうか?
冨永監督「そういうことに気付くのが遅すぎたんです(笑) 大野さんと同じように、やってみたら面白かったんで、じゃあ使おうとか、そんなことを(大野さんが)していると思わなかったんです。最初は、ただの取材相手だと思って、もっともらしいことを引き出そうと思っていたから大変だったんですね(笑) それが徐々にシンパシーに変わっていくと今度は僕も楽になってきたんです。『乱暴と待機』の撮影で、取材期間が半年ほど空いたんですけど、それがよかったですね。その半年間で、僕も冷却できたので。もし、短期間で撮ったらどうなっていたか分からないですね。」

—大野さんは今でも音に関わって、こだわっていきたいんでしょうか?
冨永監督「大野さんも自分の本職が何なのか今も分からないと言っている通り、その時面白いと思ったことをやってしまうというじゃないですか。音に関しては常に面白い対象であるというだけで、ずっと音に関わっていくつもりもないんじゃないかなと思います。」
—作品の前半、音響デザイナーの方々が大野さんについて語って、肝心の大野さんが出てこないという構成にしたのはどういう理由でしょうか?
冨永監督「一応、構成台本はあったんです。でも、言ってみれば、こちら本位のもので。それにピッタリくるように談話を引き出そうとすると駄目なんです。思い通りにならないんです(笑) こっちの思っているようなことは喋ってくれないし、あんまり水を向けすぎると苦言を呈されるというか(笑) なので、まず(大野さんとの)関係を作らないと駄目なんだなというのは分かりましたね。だから、取材の前期というのはその段階ですよ、怒られても、どんなに愚問だろうと聞いたりして、とにかくそれがないと駄目だと。冷静に落ち着いて取材できたのは、さっき言ったように「乱暴と待機」の撮影で半年空いて冷却期間があって、それからですね。同じ作り手の先輩なんだと思えたのは。
ああいう構成になったのも、取材が全部終わってからかもしれません。構成にすごく苦労しましたから。編集の打ち合わせで言ったのは、前半は大野松雄のことを”死人”として扱おうと。生きているか死んでいるかわからない伝説の人として扱おうと。亡くなった友人について喋っているように作っていって、「あいつは借金で逃げて、行方がわからない」というような感じで、後半で大野さん登場という(笑) でも、本当は取材の前に挨拶に行ってるんですよ(笑)」
—大野さんがどういう方が肌感覚で分かってきてからはどのようにインタビューしたんですか?
冨永監督「「それはなんですか」とか、そういう感じです(笑) 「どういう姿勢でお仕事しているんですか?」みたいなことを聞くと「仕事がきたからやったんだよ」みたいな答えになってしまって。
「それなんですか」という感じのほうが、具体的にいといろと答えてくれるんです。良い答えをもらおうと思っても裏を読まれてしまうんです。なので、勝手に喋ってもらうのを待つしかないですね。その為の餌として「昨日は何してたんですか?」とか「今日はいい天気ですね」とか、そんな質問していました(笑) 僕は劇映画であっても状況に対応するのが好きなので、ドキュメンタリーに僕は向いているんじゃないかなと思いました(笑)」

—現場の状況に対応するといえば、『乱暴と待機』で撮影現場の上空に飛行機が飛んでうるさいから、先に飛行機が飛んでいる画を入れたという話は本当ですか?
冨永監督「本当ですね。同録なのでどうしても飛行機の音が入ってしまって。じゃあ、最初から飛行機が飛んでいる町なんだということにすれば円滑に進むということで。状況対応というのは、そういうことです(笑)」
—大野さんの仕事へのスタンスとご自身のスタンスのどこが似ていると思いますか?
冨永監督「似ているというのは僕が勝手に思っているだけで、基本的に物を作っている人は突き詰めると大野松雄になると思っています。話を聴いているうちに、僕がやっていることも大野さんのやっていることに似ているんじゃないかと、ようやく気付き始めて。大野さんは使えるものを使ってやっていたら、こうなったくらいの感じで。でも、(大野さんが)人と比べて優れているのは柔軟さですよね。別に変なことをしようと思ってやった訳ではないので。」
—この作品を撮って、大野さんから受けた影響というものはありますか?
冨永監督「大野さんの影響を受けたかどうかと言われると、影響は受けていないと思います。でも、大野さんのおかげで己を知ることはできたなと思います。これはいつも僕がやっていることだなと。それを自分の言葉にっできなかったことを、大野さんが見せてくれたというのは、ありました。勝手に僕がそう思っているだけですけど(笑)
でも、影響といえば、狙ってやってもできないことはできないし、何も考えないでやったら出来ちゃうということがあるということは改めて気付きましたね。
『亀虫』という本当に適当に作った作品があるんですけど(笑) 未だにそれが最高傑作と言われているのが本当にツライんですが(笑) 本当にあれは手抜きだったのに、評価されてします。でも、そういうものなんだというのが大野さんと接して諦めがつきました(笑) 自意識と客観的評価の違いというのが、常々思っていたことなんですけど、それが大野さんに会って確信に変わりました(笑)  自意識と客観的評価が一致するということは、恐らくないと思っていて、そんな幸せなことは生涯に一回あればいいくらいのことであって、こういう仕事ができているということ、それでいいじゃないかという。作品を多くの方に観ていただけたらそれでいいじゃないかという感じですね。そういう意味では大野さんに影響は受けましたね。」
—ありがとうございました
『アトムの足音が聞こえる』
5/21(土)より、ユーロスペースにてレイトショー他全国順次公開
監督:冨永昌敬 ナレーター:野宮真貴 音響効果:パードン木村 撮影:月永雄太・冨永昌敬
助監督:原田健太郎 仕上担当:田巻源太 企画・プロデューサー:坂本雅司
プロデューサー:大野敦子 企画協力:奥村健


出演:大野松雄 柴崎憲治 竹内一喜 大和定次 杉山正美 高橋巖 柏原満
桜井勝美 田代敦巳 町田圭子 小谷映一 ひのきしんじ 松田昭彦
Open Reel Ensemble 齋藤昭 涌井康貴 村上浩 由良泰人 レイ・ハラカミ 金森祥之
製作:シネグリーオ
配給・宣伝:東風
助成:文化芸術振興費補助金
公開に合わせ、大野松雄新作アルバムリリース決定
アルバム・タイトル:YURAGI #10

価格: 2,000円(税込)
発売日:2011.5.25
1. Yuragi #10(version 1)
2. Yuragi #10(version 2)
映画公開に合わせ、2005年の『大野松雄の音響世界3「はじまり」の記憶』以来となる新作アルバムをリリース。2009年7月に草月ホールで行なわれた公式としては初のライヴ・パフォーマンスで試みた表現を再構築した音源を使用。大野自身が開発し、70年代の音響業界に多大なる影響を及ぼしたサラウンド効果「大野サラウンド」を生かし、オープンリール・テープ他を使用したアナログ・メロディーを全編に鏤めた新曲をミックスの違う2ヴァージョンで収録。この2曲を聴き比べて大野の「音」へのこだわりを体感して欲しい。「大野サラウンド」を体験して頂く為に、ヘッドフォンよりも2本のスピーカーから音を出してお聴き頂くことをお薦めします。
マスタリングはANIMAの最新アルバム『シャガール』のプロデュース、砂原良徳の10年振りのソロ・アルバム『liminal』のミックス&マスタリングを手掛けた益子樹(ROVO)が担当し、オリジナルの音源に敬意を表した素晴らしいマスターに仕上げている。
劇場舞台挨拶決定!
場所:ユーロスペース(渋谷区円山町1-5) 上映時間:21:10~
日時 5月21日(土) 初日舞台挨拶【上映前】登壇者:冨永昌敬監督
日時 5月22 日(日) 舞台挨拶【上映後】登壇者:大野松雄、坂本雅司(プロデューサー)(予定)
イベント情報
5/19(木)「DOMMUNE」19:00~21:00
第一部は、冨永昌敬監督、パードン木村、和田永(OpenReelEnsemble)、田中雄二が出演し、トークショーを繰り広げます。 第二部には、大野松雄が出演し、生演奏を披露!オープンリールを実際に操り、あの“足音”を聞かせます。
5/22(日)タワーレコード新宿9Fにてインストアイベント開催! 大野松雄氏と畠中実氏(ICC主任学芸員)によるトークショー。観覧はフリーです。 対象店舗でCDお買い上げの方には先着でトーク終了後に行われるサイン会参加券お渡しします。
5/24(火)ニコニコ動画「松武秀樹のテクノスクール」23:00~24:00 「4人目のYMO」と呼ばれる松武秀樹の番組に、大野松雄がゲスト出演いたします!
詳細は公式サイトへ http://www.atom-ashioto.jp/

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