映画レビュー 映画『SUPER8/スーパーエイト』



米テレビシリーズ『LOST』のクリエーター、そして『スタートレック』の監督として知られるJ.J.エイブラムス。スティーヴン・スピルバーグを敬愛する彼は、70年代や80年代のスピルバーグ作品にオマージュを捧げた『SUPER8/スーパーエイト(原題:Super 8)』という新作映画を作り上げた。
物語はセットや衣装、小物までも当時の様子を忠実に再現している1979年の夏、オハイオ州の鉄道沿いの小さな町が舞台。ある晩6人の中学生が、列車の駅で8ミリカメラを使いゾンビ映画を撮っていると、貨物列車が通り過ぎようとするが、それに向かって一台の車が突っ込み、現場は大惨事となる。事故後、町では不可解な出来事が次々と起こり始め、命からがら助かった子供達は出来上がったフィルムを見てみると、誰にも言えない驚くべき”モノ”が映っていた。

本作の主人公ジョー(ジョエル・コートニー)は母親を突然の事故で亡くし、心に深い傷を負い、彼の保安官の父(カイル・チャンドラー)もまた未だ悲しみから解き放たれないでいる。そんな中ジョーは、母の死に関わったとされる男の(ロン・エルダード)の娘アリス(エル・ファニング)に恋心を抱く。特に前半は家族や恋愛そして友情といった重要な伏線となるドラマが、まるでスピルバーグの映画のように恐怖とサスペンスにうまく織り込まれており、好奇心を途絶えさせない。
本作はスピルバーグ作品を強く意識した作品ゆえに、映画の中での描写や設定、プロダクションデザインに『ジョーズ』『未知との遭遇』『E.T.』『グーニーズ』といった作品の要素をにじませる。またそれに加え、『LOST』を観ていたファンへエイブラムスからのプレゼントが作品の中に隠されているのも面白い。ところが惜しいことに、エイブラムスはスピルバーグの世界観を体現することにこだわり過ぎたせいか、それを超えたオリジナリティが『SUPER8/スーパーエイト』にはあまりない。クエンティン・タランティーノが『イングロリアス・バスターズ』で映画愛を超え、彼自身のオリジナルに映画を昇華させたように、スピルバーグ作品に対する愛からリープしたものがあれば本作は傑作になりえたかもしれない。
夏休みに1本8ミリ映画を完成させることが夢だった子供たちの人生が、映画を作りという体験を通し、永久に変わってしまうというこの物語。その背景には、映画作りを子供の頃に発見したエイブラムスとスピルバーグの子供時代の思い出や精神が強く本作を作る上でのインスピレーションとなっているそうだ。今は子供でもカメラ付き携帯電話などで、簡単にビデオが作れる世の中。本作を観て、子供たちがカメラさえあれば何でもできるということに気付き、また映画を作りたくなる子供たちが増えるかもしれない。
レビュアー:岡本太陽
『SUPER 8/スーパーエイト』
6月24日(金)よりTOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
公式サイト:http://www.super8-movie.jp/
(C)2011 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
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